慰謝料はいくらになりますか?

 離婚の際の慰謝料はいくらになるでしょう? ネット上では、「慰謝料額を教えます」などという書き込みがありますが、そう簡単に算出できるものではありません。

 まず、第一になぜ、慰謝料は支払われるのでしょうか?
 それは、
「有責的離婚原因による離婚においては、有責者が不法行為の要件を満たす限り、他方配偶者は慰謝料の請求ができる。」(内田貴著『民法4』128頁、財団法人東京大学出版会、2002年7月19日発行。現在は補訂版が刊行されています。)。
 また、離婚慰謝料には、暴力・不貞・悪意の遺棄などから生じる精神的苦痛の慰謝料(離婚原因に基づく慰謝料)と、離婚そのものによる精神苦痛の慰謝料(離婚自体慰謝料)があるとされています。

 そこで、慰謝料の相場はいくらぐらいでしょうか?
 
まず、慰謝料の算定基準ですが、成蹊大学の上原由紀夫教授は次のとおり述べられています(山之内三紀子編『離婚・内縁解消の法律相談』109頁、青林書院、2004年7月20日発行)。
「1 裁判所は、(1)有責性、(2)婚姻期間、(3)相手方の資力を要因として、慰謝料の額を算定しているといわれております(松原里美『慰謝料請求の傾向と裁判例』判タ1100号66頁(平14))。

  (中略)

裁判官に対するアンケート調査の結果報告によると、裁判官は慰謝料額をかなり割り切って決定しているようです(小田八重子『離婚給付額の裁判基準』(判タ1029号31頁(平12))。いずれにしても、生活状況全体の要素が加味されて金額が決定されるようです。」

 このように、慰謝料算定には、「有責性」、「婚姻期間」、「相手方の資力」が、大きな要因とされています。そして、裁判官の裁量がかなり大きいようです(そのことについては、後述の「慰謝料額の調査について」をご覧ください。)。その結果、案件によっては、裁判官の判断に数百万円の差が生じる可能性があります。ですから、「慰謝料額がいくらだ」とは、軽々しくはいえないのです。

 では、次に具体的な金額ですが、千葉県弁護士会編『慰謝料算定の実務』(ぎょうせい、平成14年8月31日発行)は、平成元年から同14年までの判例時報等に掲載された裁判例を検討した結果、200万円が4件と多く、平均は370万円としています。

 さらに、松原里美執筆「慰謝料請求の傾向と裁判例」(『家事関係裁判例と実務245題』66〜67頁、判例タイムズ1100号、2002年11月10日発行)から平成元年以降の裁判例を引用して、ご紹介します。

「3 裁判例における慰謝料請求の概観

  (中略)

 (1)配偶者の不貞行為(民法770条1項1号)、悪意の遺棄(民法770条1項2号)

  (中略)

 <7>東京高判平1・11・22家月42巻3号80頁
   有責配偶者からの離婚請求であるが、別居期間が相当長期に及んでおり(40年間)、その間に未成熟の子がないことなどから離婚を認めた。夫に不貞あり婚外子二子。慰謝料1500万円(請求額予備的申立てとして3000万円)。

 <8>東京高判平3・7・16判時1399号43頁
   夫53歳、妻54歳。子らはともに成人している。婚姻関係の破綻には夫にも相当の責任があるが、妻の不貞が破綻を決定的なものとしたとして、妻に対して夫の予備的反訴における慰謝料200万円(請求額1000万円)の支払を命じた。

 (2) 婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)

   (中略)

 <6>京都地判平2・6・14判時1372号123頁
   夫が一切性交渉を持とうとせず、事態善処に努力しなかったことにより婚姻破綻。慰謝料500万円を容認(請求額1000万円)。婚姻期間約3か月。

 <7>岡山津山支判平3・3・29判時1410号100頁
   妻が性交拒否。婚姻期間約9か月。慰謝料150万円(請求額500万円)。

 <8>神戸地判平6・2・22判タ851号282頁
   中国国籍を持つ女性が日本人男性と中国において同国の方式に基づいて婚姻し、妻は婚姻の半年後に来日して婚姻生活を始めたが、次第に不和となり夫の暴力や虐待が激しくなった。一子あり。慰謝料200万円(請求額800万円)。」